アメリカ不動産はじめてガイド

第3章

購入する際の
具体的な対応と流れ

日米における税務申告で必要な対応

読了目安:分
税金
  • アメリカでの所得計算は、クロージング書類、収支表、その他の経費明細の3つが必要
  • 日本とアメリカでは法律が異なるため、所得計算の結果が違ってもまったく問題ない
  • 物件を個人や日本法人名義で購入していれば、日本とアメリカで申告タイミングは同じ
  • 名義がLLCだった場合は、その課税区分によって申告タイミングが変わる

アメリカ不動産を購入し、家賃収入を受け取り始めた後は、基本的に毎年の税務申告が必要になります。

この際、アメリカでの収入だから、アメリカで税金を払えば終わりとはなりません。日本居住者であれば、原則としてアメリカでの収入についても日本で税金を払う必要があるため、日本とアメリカの双方で税務上の対応が発生します。

具体的にどういった手続きをすればいいのかは、それぞれの国の税理士がそれぞれの国の法律に従って対応してくれるはずですので、細かく理解しておく必要はありません。

ただその概要に関しては、自分でも理解しておくことで安心して任せられますし、依頼を忘れてしまうことによる申告漏れも防ぐことができます。

この記事では、アメリカ不動産を購入した後に必要となる日米の税務申告に関する実務の概要を解説します。

所得計算に必要な3つの書類

まず、日本側の税務申告について見ていきます。

アメリカ不動産からいくら所得が生じたのか計算する上で、基本的な考え方は日本の賃貸不動産と同じです。家賃収入などから必要経費を差し引いて、所得を計算します。

この計算に必要な資料としては、以下の3つです。
1.物件購入時のクロージング書類(特に支払い金額の内訳ページ)
2.物件管理における収支表
3.その他の経費明細

1のクロージング書類には、物件価格だけでなく、ローン会社やタイトル会社への支払いなどの金額がすべて記載されており、物件の取得にかかる費用をすべて把握することができます。

この資料は自身のメールアドレス宛に添付ファイルとして送られているはずですが、もし申告対応の際にどうしても見つからない場合は、不動産エージェントに依頼すればあらためて写しを送ってもらえるはずです。

2の収支表は、物件を取得した後の収入、支出がすべて記載されたものです。家賃収入のほか、管理費、修繕費、HOA、固定資産税など、物件運営に関する主要な収支が記載されており、これがあることでその期の利益がいくらだったか一目で分かります。

一見用意するのが大変に感じられますが、これは基本的に管理会社がその都度帳簿付けを行い所有していますので、管理会社に依頼すればすぐに完成品を受け取ることができます。念のため、管理会社を選ぶ際にはそういった帳簿をすぐに出してもらえるか確認しておくと安心です。

3のその他経費は、例えばアメリカ不動産の物件を確認するために支払った渡航費用など、管理会社が把握していないアメリカ不動産に関係する経費のことです。

人によってはこのような経費がない場合もありますが、もし専門家への支払いなど思い浮かぶ支出がある場合には、経費として認められるか日本の税理士に相談してみましょう。

これら3つの資料が揃えば、アメリカでの収入を計算し日本での申告に追加することができます。

日本での税額計算でよくある質問

日本での申告における計算で、疑問が浮かびがちな点について補足します。よく聞かれるものとしては、以下の2つが挙げられます。

1.「その他の経費明細」は、日本とアメリカで二重計上とならないのか
2.日本とアメリカで、不動産所得として計算される数字が一致しない

アメリカ側ではアメリカ側で、先ほどお伝えした計算に必要な資料3つをCPA(米国公認会計士)へ渡して、所得計算をしてもらいます。

この際、例えばアメリカへの渡航費を日本でもアメリカでも経費として計上することになるため、人によっては二重計上となって良くないのではと懸念する方もいます。

結論としては、日本とアメリカそれぞれで経費として計上してしまって特に問題はありません。

「アメリカ不動産からいくらの所得が生じたか」を計算するためには、家賃収入から経費を差し引く必要があります。日本とアメリカで家賃収入金額を計算式で使用しても二重計上にならないように、経費もまたそれぞれで計上して然るべきものとなります。

特段気にせず、日本の税理士とアメリカのCPAへ、まったく同じ3つの資料をお渡しください。

ただし、そうしてまったく同じ資料を渡したはずが、日本とアメリカで不動産所得の数字は一致しません。これが問題ないのかというのが2つ目のよくある疑問です。

こちらも、結論としては問題ありません。

同じ家賃収入や経費資料を使っていても、減価償却の方法や経費として認められる範囲、為替換算などについて日米でルールが異なります。日本では日本の税法、アメリカではアメリカの税法に従って計算がなされ、その計算結果は異なるものとなります。

特に日本では、法人で国外中古建物を所有している場合、簡便法による比較的短い期間での減価償却が行えるため、アメリカでの計算と大きく変わることになります。

とは言え、最終的には同じ物件である以上おおよそ帳尻が合うようになっていますので、その年々で外国税額控除を行い二重課税とならないようにしていれば問題はないのです。

なお、日本での申告についてもう一つだけ補足事項をお伝えしておくと、外国税額控除には控除できる金額の上限がある点は注意が必要です。

具体的な上限額は一律のものでなく、所得金額等によって変わるため、正確な数字については税理士に確認してみてください。

アメリカ側は物件の名義人次第

続いて、アメリカ側の税務申告について見ていきます。

比較的分かりやすいのが、アメリカのLLCを介さず、個人または日本法人が直接アメリカ不動産を所有しているケースです。

この場合、税務申告のタイミングとしては日本のそれと同じになりますので、個人であれば年末、法人であればその決算月を過ぎたタイミングでCPAに連絡し、申告対応を依頼しましょう。

申告期限は、日本よりも比較的長いです。

一般的な非居住外国人の場合、申告期限は原則として翌年6月15日です。

アメリカ国内に営業所を持たない日本法人の場合、原則として事業年度終了後6か月目の15日が申告期限です。

アメリカで申告が完了したら、CPAから申告書のコピーと納税額が分かる資料を受け取り、日本の税理士にも共有します。

日本で外国税額控除を受ける際、必ずしも日本の「納税証明書」と同じ形式の書類が必要というわけではありません。国税庁は、外国税額を課されたことを証する資料として、外国の申告書の写しや、税務当局が発行する納税証明書などを挙げています。

そのため、申告書、納税額、実際の支払いが確認できる資料をまとめて保存しておくことが重要です。

LLCで購入した場合の確認事項

アメリカ不動産では、個人が直接物件を所有するのではなく、アメリカでLLCを設立し、そのLLC名義で物件を購入するケースも珍しくありません。

この場合にまず確認したいのが、そのLLCが米国税務上どのような課税区分になっているのかということです。

課税区分は、主なものとして以下の2つがあります。
1.パススルー課税(Pass-through taxation)
2.法人課税(Corporate taxation)

例えば、日本在住の個人がアメリカのLLCを100%所有しているケースを考えてみましょう。

アメリカの税法では、オーナーが1人(1社)だけのLLCは、原則としてパススルー課税となります。これは簡単に言うと、LLC自体には課税しないから税金計算をしなくていいということです。

例えばLLC名義で利益が1億円あり、オーナーである個人に所得が2億円あったとします。この場合、LLCの利益はパススルー(素通り)となり、個人に3億円の所得があるものとして税金の計算がなされます。

そのため以上のケースでは、税務上は単に個人が直接アメリカ不動産を所有しているケースと同じ扱いになり、申告のタイミングは既にお伝えした「年末を過ぎたタイミング」となります。

なお注意点として、「LLC自体には申告が一切必要ない」と考えてはいけません。税務申告は必要ないにせよ、外国人が100%所有する会社として定期的に情報申告は必要となっていますので、その辺りは法人設立の代行依頼をした会社に確認し毎年の対応を行いましょう。

次に、米国税務上でもう一つの課税区分だった場合です。これはあまりないパターンですが、例えば友人と二人で半額ずつ出し合って物件を買おうとLLCを設立した場合に該当する可能性があります。

このようなケースでは、税務申告の手間を減らしコストを下げるために、LLCの設立時に「法人課税」を選択されることがあります。

課税区分が法人課税となったLLCは、日本でイメージされる株式会社と同じです。利益はパススルーされないため、LLC自体の決算月を過ぎたタイミングでCPAに連絡し、申告対応を依頼する流れになります。

なおこの際、LLCからオーナーへ報酬や配当を出してしまうと、オーナー側でもまたそれぞれ個別に税務申告が必要となるため注意が必要です。

法人課税を選択した場合には、法人に利益を残すのか、オーナーへ配当するのかによっても税務上の取り扱いが変わります。特に将来の売却・清算まで考慮して、CPAへ事前に確認しておくことが重要です。

まとめ

アメリカ不動産を購入した後の税務申告というと、非常に複雑な印象を持たれる方が多いです。しかし、実際のところ大半は専門家に任せればよく、押さえておくべきポイントはわずかです。

まず、アメリカ不動産からの所得金額を計算するために、以下3つの書類を日本とアメリカそれぞれで税理士、CPAへ渡します。
1.物件購入時のクロージング書類
2.物件管理における収支表
3.その他の経費明細

この時、日本とアメリカで二重計上になるといった心配は不要であり、それぞれで計算結果が違ってもまったく問題ありません。

次に、不動産を購入した名義に応じてアメリカでの申告タイミングを把握し、CPAへ対応を依頼します。個人や日本法人で購入していれば日本での申告タイミングと同じですが、申告期限はアメリカの方が長くなります。

名義がLLCだった場合は、そのLLCの課税区分がパススルー課税か法人課税かによって申告タイミングが変わります。原則としてはパススルー課税であり、日本での申告タイミングと同じになりますが、購入の仕方によっては課税区分を選ぶ可能性もあり、その場合はLLCの決算月が申告タイミングとなります。

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