購入後の流れとトラブル発生時
- アメリカでは住人よりオーナーの権利が強いため、家賃に関するトラブルは起きにくい
- 修繕対応は、毎月家賃の3~5%を積み立てつつ、管理会社へある程度の裁量を与える
- 退去時のトラブルは、予防策として住人の質を意識した物件選定を行う
- 管理会社のトラブルが最も重大であるため、根本原因として常に目を光らせておく
クロージングを終えてアメリカ不動産の購入が完了すると、いよいよ入居者(テナント)を募集し家賃収入が発生するフェーズへと進みます。
初めてアメリカ不動産を購入する方の中には、「日本に住みながら本当に管理できるのか」「何かトラブルが起きたらどうするのか」と不安に感じる方もいます。
しかし実際には、日々の入居者対応や家賃の回収、修繕業者の手配などは、現地の管理会社が行います。そのため、オーナー自身は現地に行かず、基本的にすべて任せていれば問題ありません。
一方で、すべてを管理会社が自動的に判断してくれるわけでもありません。
「家賃をいくらにするか」「高額な修繕を実施するか」「家賃を滞納している入居者に対してどう対応するか」など、最終的にオーナーの判断を求められる場面もあります。
そこで今回は、アメリカ不動産を購入した後の基本的な流れと、保有中に起こり得る代表的なトラブル、その際にどのように対応するのかについて解説します。
家賃滞納リスクは日本よりずっと低い
管理会社との契約は、たいていクロージングまでの間に並行して完了させておくものです。
そのためすでに入居者がいる物件でなければ、物件購入が完了し次第すぐのタイミングで、管理会社による入居者募集が始まります。
この際の大まかな流れとしては、
「家賃相場の確認→募集家賃の決定→入居者募集→入居希望者の審査→賃貸契約→入居」
という順番です。
これらのうち、日本にいるオーナーが担当するのは「募集家賃の決定」くらいです。
物件情報を賃貸市場へ掲載したり、問い合わせへ対応したり、内覧を行ったり、入居希望者の収入や信用情報などを確認したりする作業は、基本的に管理会社が担当してくれます。
ただし、「家賃をいくらに設定するか」という話だけでも判断に迷いやすいものです。
管理会社へ相談すれば、
「近隣の同程度の物件は月2,500~2,700ドル程度で募集されています」
といった情報は提供してくれます。
しかし、ではいくらにするかという判断については、自分でしなければいけません。
2,700ドルで募集すれば、高い家賃を得られる可能性はあります。しかし、その金額では入居者が決まらず、1か月空室が続けば2,700ドルの収入を丸ごと失います。
2,500ドルで募集すれば、1か月当たりの収入は多少減りますが、早く入居者が決まり空室期間を短くできるかもしれません。
これはどちらが正しいというものではありませんので、このガイドでも特段のお勧めはありません。しいて言うなら「エイヤで決める他ない」という諦めの境地もある程度大切というくらいです。
ただし参考までにお伝えすると、契約更新により家賃は毎年変更できます。そのため、もし最初に安く設定しすぎてしまったとしても、1年後の更新で高く設定しなおすこともできます。
仮に「家賃を上げるのは同意しない」と居座る住人がいた場合、アメリカでは強制退去手続きが簡単にできます。だから追い出せますという話ではなく、それは住人側も理解しているので、家賃が払えないとなれば速やかに引越し手続きをしてくれます。
そのため、日本ほど最初の家賃決定に取り返しのつかない要素はありませんので、暫定的な金額として気軽な気持ちで決めてしまっても特に問題ありません。
なお、このようにアメリカでは住人側よりオーナー側の権利が強いため、不動産投資として考えた場合、家賃滞納によるリスクが日本よりもずっと低いと言うことができます。
万一家賃滞納トラブルが発生した場合は、管理会社に相談しながら、数ヶ月以内には強制退去手続きを行い新たな入居者を募集することが可能です。
修繕対応はある程度管理会社に委ねる
不動産を長期間所有していれば、どこかのタイミングで設備の故障や修繕は必ず発生します。
たとえば、エアコンが動かなくなった、水が漏れている、トイレが故障した、電気設備に不具合が生じた、といったトラブルです。
こうした場合の備えとしてまずお勧めするのは、家賃の3~5%程度を毎月修繕費として積み立てておくということです。
この金額はあえて別の口座にいれておかなくても構いません。投資計画として最初に物件購入による利回り計算をする際に、その金額を加味したシミュレーションを作成しておくということです。
そのようにしておけば、いざ修繕が必要となり「300ドルかかります」「500ドルかかります」と不意に連絡があった場合でも、およそ織り込み済みのものとして心穏やかでいることができます。
そして修繕費に関しては、もう一つ重要なことがあります。それが、管理会社との契約時に「○ドル以下の修理であれば、オーナーへの事前確認なしに管理会社の判断で実施してよい」という上限額を決めておくことです。
たとえば真夏のダラスでエアコンが故障したとします。
入居者から管理会社へ連絡が入り、管理会社が日本にいるオーナーへ連絡し、オーナーが内容を確認して承認し、その後ようやく業者へ連絡する、という流れでは対応に時間がかかってしまいます。その間、住人は高温の屋内で過ごすことになります。
入居者の生活や安全に直結する設備については、法律や契約などにより迅速な修理を求められるケースが多く、あまりに時間をかけると賠償金を求められる可能性も出てきます。
そのため、数百ドル程度までの小規模な修繕であれば、管理会社の判断ですぐに業者を手配できるようにしておくと、日常的な管理が非常にスムーズになります。
なお、長い期間不動産を所持し続けていれば、高額な修繕が必要になることもあります。
代表的なのは、エアコンなどのHVAC設備、給湯器、屋根、配管、ガレージドアなどです。
これらも初めのうちは小さな修理対応で済みますが、次第に故障の頻度が上がって来て「これ以上修理を続けるより本体そのものを交換した方が安い」という判断を求められることがあります。
小さな修理なら数百ドルで済みますが、大型設備の交換となれば数千ドル、内容によっては1万ドルを超えることもあることは、不動産を保有し続ける場合認識しておく必要があります。
ただし、このような大型対応は何の前触れもなくいきなり発生することはほとんどありません。
理由は、購入前のインスペクションレポートに、そういった可能性が直近であればその旨が記載されるからです。
たとえば「エアコンはすでに15年以上使用されている」「屋根の劣化が進んでいる」と分かれば、購入価格を交渉したり、あらかじめ余分に修繕積立をする想定でシミュレーションを作り直したりすることができます。
もちろん将来の故障をすべて予測できるわけではありませんが、大型対応の予測さえある程度見通しておけば、トータルとして家賃の3~5%程度を基準として毎月の積み立てを考えておけばおおよそカバーできるはずです。
退去時のトラブルはエリア選びで予防
入居者が退去する際にも、想定外のトラブルにより費用が発生することはあります。
アメリカでも、通常の使用によって生じる「通常損耗」と、入居者の故意や不適切な使用による「入居者による損傷」は区別されます。
長期間住んでいたことによる多少の壁の汚れなどについては、基本的にオーナー側の負担となります。これは日本でも想定されるものであり、それほど問題はありません。
問題は「入居者による損傷」の方です。たとえば退去後に室内を確認したところ、壁に大きな穴が開いていた、ドアが壊れていた、ペットによって床が傷んでいた、といったケースがあります。
日本人が考えるほどアメリカ人は家を大切に使わず、そのために驚くような損壊を目にしたことがあるという話も聞きます。
こうした明らかな損傷については、敷金から費用を差し引いたり、不足額を追加請求したりします。とは言え、それを修理するまでの間、次の入居者を募集することは難しくなります。
そのため賃貸経営において起きうるトラブルとして、退去後に物件を整える期間が発生し、その間の空室による家賃収入の減少と、修繕・清掃費用の両方が発生する可能性はあるのです。
こうしたトラブルは、いざそうなった時の対処法というよりも、事前の予防策が重要になります。これは、購入時のエリア選びに気を付けるということです。
価格が安いエリアは、住民の質も悪くなり、上記のような損壊が発生しやすくなります。
逆に価格が高いエリアでは、住民の質が高くなり、比較的家は綺麗に使われるようになります。
そのため長期間住むファミリー層が多い地域や、治安・学区・生活利便性などの面から一定の需要が続いている地域を選べば、退去時のトラブルは圧倒的に少なくなります。
このガイドにおける別の記事で、物件選びにおける3つの観点をご紹介しましたが、その際にお伝えした「住宅価格中央値から20%程度高い価格を目安として狙う」ことの具体的な意味は、以上のような管理上のトラブルを避けるためでもあると言えます。
トラブル対処の根本は管理会社
ここまで、家賃滞納、設備故障、退去時の修繕などのトラブル対応について説明してきました。
しかし、実際の不動産運営において最も大きな問題になるのは、物件そのものでなく、管理会社である場合もあります。むしろこちらの方が、圧倒的に重大性が大きいです。
管理会社のトラブルとは、たとえば以下のようなケースが挙げられます。
・入居者募集に時間がかかりすぎる
・入居者への対応が遅い
・オーナーへの報告がほとんどない
・家賃の送金が遅い
・修理費が相場より高い
・収支報告書の内容が不明瞭
アメリカ不動産における管理会社の重要性は別の記事で詳しく説明しており、それこそ物件選びの段階から「信頼できる管理会社の管理エリアかどうかの観点も重要」と考えるほどです。
とは言え、すでに購入が完了した後で管理会社とのトラブルがあった場合、そのエリアを管理する他の管理会社を探すことも必要になってきます。
小さな不満が出るたびに管理会社を変更していては、新しい会社への引き継ぎ、契約変更、入居者への通知などが必要になり、かえって手間が増えてしまいます。
しかし、返事がいつも遅い、高額な修繕が続く、問い合わせをしても納得できる返事がないといった状態が続くのであれば、管理会社の変更も検討した方がよいと言えます。
日本に住むオーナーにとって、管理会社は現地で自分の代わりに物件を運営してくれる重要な存在です。
良い管理会社さえ見つけることができれば、家賃滞納、設備故障、退去時の修繕といった問題についても実務の大部分を現地で対応してもらうことができるため、実際のところそれほど問題にはなりません。
逆に管理会社の対応が悪かった場合、小さなトラブルでもどんどん傷口が広がり、大事になってしまう可能性があります。
不動産投資における根本的なトラブル対処法として、管理会社に問題はないかという視点は常に意識しておくことが重要と言えます。
まとめ
アメリカ不動産を購入した後には、入居者募集、設備の都度修繕、退去時の原状回復、そしてまた入居者の募集といった基本的なサイクルがあり、その中で様々なトラブルが発生します。
家賃の決定は、毎年家賃を上げていけるため、まずは1年間の暫定的な金額くらいの気持ちで決めて問題ありません。もし家賃滞納などのトラブルが起きた場合でも、アメリカではオーナー側の権利が強いため、日本よりずっと速やかに解決することができます。
修繕対応は、小さなものであれば管理会社だけで対応できるよう事前に条件を決めておくことが大切です。大きなものは購入時のインスペクションレポートである程度予測でき、いずれにしろ備えとして毎月家賃の3~5%程度を積み立てておくことが推奨されます。
退去時に発生するトラブルは、住人の質によって大きく左右されるため、購入時点で「中央値から20%程度上」くらいの物件を選ぶことにより避けやすくなります。
上記いずれのトラブルも、根本的な対応として管理会社がしっかりしていればオーナー側で悩むことはほとんどありません。逆に管理会社が頼りない場合は大きな問題になり得るため、管理会社とのトラブルこそ、最も目を光らせておくべき問題と言えます。
