アメリカ不動産はじめてガイド

第2章

購入時に相談する
事業者選びのポイント

不動産エージェント選びの落とし穴

読了目安:分
専門家選び
  • アメリカ不動産を購入する場合、不動産会社でなく不動産エージェントに依頼をする
  • 不動産エージェントは実務を行ってくれる存在で、必ずしも「相談する相手」ではない
  • まずは自分で自分の投資条件を整理する。不動産エージェント探しは最後がお勧め
  • 自分だけでは整理できない場合、自分たちサイドにいるプロを別途用意する方法もある

アメリカ不動産を購入したいと考えた時、多くの人が最初に考えるのは「信頼できる不動産会社はどこか」ということではないでしょうか。

しかし、ここに一つ注意点があります。

アメリカの不動産会社(不動産エージェント)は、不動産取引における重要な専門家ですが、「自分にとってどの地域の、どのような不動産を買うことが最善なのか」までゼロから考えてくれる投資コンサルタントではありません。

このことを理解せず、「専門家なのだから、自分にとって一番良い物件を提案してくれるだろう」とすべてを任せてしまうと、自身の投資目的に合わない物件を購入してしまうことがあります。

今回は、アメリカ不動産を購入するうえで知っておきたい不動産エージェントの役割と、その選び方について解説します。

不動産会社と不動産エージェントの違い

日本では、不動産を買いたいと思ったら「不動産会社に相談する」という感覚が一般的です。

一方、アメリカでは「不動産会社」と、実際に顧客を担当する「不動産エージェント」は分けて考える必要があります。

日本の不動産会社に近い存在は、そのための資格所有者を指して一般に「ブローカー」と呼ばれます。

日本ではブローカーという言葉にどことなく怪しい印象を持つ人も多いですが、アメリカでは州のライセンス制度のもとで資格を取得した、専門知識を持ち取引をスムーズに進める不動産実務の立派な専門家です。

そしてそれとは別に、個人で不動産の売買・賃貸の仲介を行う人が「不動産エージェント」と呼ばれます。実際に買主や売主とやり取りをするのはこちらです。

ライセンスの名称や制度は州によって多少異なりますが、基本的に不動産エージェントはブローカーの下について活動し、ブローカーがその業務について責任を持つ仕組みになっています。

そのため、不動産を買いたいと思った場合に探す先は、基本的に「不動産エージェント」となります。

なお、費用に関しても日本と少し違うところがあり、アメリカでは「買主側と売主側のエージェント費用はどちらも売主が支払う」のが一般的です。

その金額は、アメリカ全土で統一されているものではありませんが、売買される物件に対しておおよそブローカー1%、買主側エージェント2.5%、売主側エージェント2.5%の合計6%となっています。

これらについては2024年に業界ルールが緩和され、現在は「交渉次第」となっていますが、現地の不動産エージェントによると商習慣としてまだまだ同様の状況が続いているとのことです。

不動産エージェントの業務内容

不動産エージェントが具体的にしてくれることは、多岐にわたります。

買主側のエージェントであれば、条件に合った物件を探すことから始まり、内覧の手配、物件情報の確認、オファーの提出、価格や取引条件の交渉、そしてクロージング対応まで、購入に関するさまざまな実務をサポートします。

実はこの中で意外と重要なのが、「交渉」です。

アメリカには交渉文化があり、提示された価格に対して値下げを求めるのは必ずしも失礼なことではありません。

もちろんスーパーマーケットの値札に対してまでそのようなことはしませんが、アメリカの不動産売買では提示価格だけでなく、物件に不具合があった場合どちらが修繕費用を負担するか、最終金額の支払いをいつまで待ってもらえるか等、さまざまな条件について交渉が行われます。

不動産のような大きな取引では、一つ一つの条件が最終的な投資収益へそれなりに大きく影響します。

しかし、日本人は「相手が提示してきた条件に対して交渉を重ねる」ということ自体に抵抗を感じる人が少なくありません。

そのため、もしも高い交渉力を持った不動産エージェントに担当してもらえることになったのであれば、大いに頼れる存在となります。

それでは、何がこの記事のタイトルにある「落とし穴」なのでしょうか。

それは、不動産「取引」の専門家と、自分の資産全体を考えて「投資戦略を決める」専門家を、同じものだと思ってしまうことです。

例えば、

「テキサスとカリフォルニアのどちらに投資するべきか」

「1億円の余剰資金のうち、いくらを不動産に振り分けるべきか」

「現金で買うべきか、それともローンを使うべきか」

といった問題は、一つの物件を売買する実務よりも上流にある投資判断です。

ダラスの不動産エージェントに相談すれば、ダラスの市場や物件について詳しい話を聞くことができます。しかし、「1億円の余剰資金がある」と言えば、全額を使って購入できるダラスの物件を提示するものであり、

「他の州の物件と組み合わせた方がいいかもしれない」「まずは5000万円で1件購入して様子見してはどうか」といった、別の選択肢を提示してくれることは一般的にありえないのです。

以上のような理由から、不動産エージェントは頼れる存在ではあるけれども、「投資戦略の専門家」とは分けて考えることもまた重要と言えます。

エージェント探しでお勧めする流れ

初めてアメリカ不動産を購入する場合にお勧めしたいのは、いきなりエージェントを探すことから始めないという方法です。

その前にまず、自分で自分の投資条件を整理します。例えば、以下のようなイメージです。

「余裕資金は1億円あるけれど、まずは予算5,000万円で探す」

「一件目は現金で購入して、問題なければ二件目はリファイナンスしてローンを使う」

「キャッシュフローが多少悪くても、値上がり益によるトータルの利回りを重視する」

条件がおおよそ整理できたら、Zillowなどを使い、自分でも実際に売りに出されている物件を見てみます。

ここで目的としているのは、自力で最良の物件を見つけることではありません。

「このエリアでは、50万ドルあればこの程度の住宅が買える」

「同じダラスでも、価格が安いもので20万ドルくらいのものもある」

といった相場観を持つことです。

10件ほど見てみるだけでも、不動産エージェントから提案を受けた際の理解度は大きく変わります。

そのうえで、エージェント探しをスタートします。

例えばダラスに日本語が通じるエージェントが10人いたとすると、その人達へ「ダラス近郊で50万ドル以下、築古の木造戸建てを投資目的で探しています」と、同じ条件で問い合わせてみるのです。

そうしてその中から、レスポンスが良い、サービスが良い、相性が良い、そういった人を選ぶのがお勧めです。

物件情報については、同じような物件を提案してくる人もいますし、こちらが考えていなかったエリアを提案する人がいるかもしれません。しかし、自分自身が目利きできない中では、その差から相手の実力を判断するのは難しいだろうと思います。

なお、アメリカでは多くの不動産情報がMLS(Multiple Listing Service)というシステムを通じて業界内で共有されている他、Zillowなどのポータルサイトにも十分な量の情報が掲載されているため、エージェントによってアクセスできる物件情報が大きく変わることは基本的にありません。

日本のように「不動産会社によっては良い物件情報を握っている」ということが基本的にないため、こちらに寄り添ってくれる姿勢の方が大きな差別化要素になり得ると言えるのです。

自分で条件を絞り切れない場合の選択肢

ここまで読んで、「そうは言っても初めてアメリカ不動産を買うのだから、自分でエリアや価格帯、投資方針まで決めるのは難しい」と思う方もいるはずです。

その場合には「取引を行う専門家」と「自分の判断を手伝ってくれる専門家」を分けて、それぞれと契約する方法もお勧めです。

後者のような存在は、「パーソナルエージェント」と呼ばれたりします。これは資格名称ではなく、アメリカでは様々な分野においてそういった存在がいるという話になります。

例えば、注文住宅を建てる場面を考えてみてください。住宅メーカーから、

「床はどういった素材にしますか?」

「壁紙はどれにしますか?」

「このような追加設備はいかがでしょうか?」

と次々に質問され、提案されたとします。

この場合、住宅会社にすべて任せると割高なものを押し付けられてしまう可能性も考えられますが、そうは言っても自分自身で全部決めるには知識が足りず自信が持てないということは往々にしてあります。

そういった時、「自分たち側に一級建築士を雇い、味方目線でチェックしてもらう」という手段を取ることもできます。このように「プロと話す時、自分たちサイドにいるプロ」がパーソナルエージェントです。

アメリカ不動産についても、同じ考え方ができます。不動産エージェントへ条件を伝える前の段階で、利害関係のない別の専門家に相談してみるのです。

これは予算や物件選定だけでなく、ローンを利用すべきかどうか、その割合はどれくらいがいいか、あるいは税務対応としてどのように申告すべきかなども含むイメージです。

もちろん、それぞれの実務はローンエージェントや米国公認会計士(CPA)が行いますが、その際もやはり「自分たちサイドにいるプロ」がいた方がスムーズだという発想になります。

そのためには追加の費用が発生しますので、自分で情報を収集し責任を持って判断できるという方は、特に誰かを頼らず最初から自分で不動産エージェントを探した方が安上がりです。

しかし、数千万円、場合によっては1億円を超える海外不動産を購入するのであれば、「売買を成立させる専門家」とは別に、自分側から全体を見てもらう人に費用を払うこともまた、一つの選択肢と言えます。

まとめ

アメリカ不動産の購入において、不動産エージェントは取引を進めるうえで欠かせない存在です。

一方で、不動産エージェントを「相談する相手」「自分にとって最適な投資戦略を考えてくれる相手」と捉えてしまうと、期待する役割との間にズレが生まれてしまいます。

お勧めする順番としては、まず自分で自分の投資条件を整理すること、そして不動産エージェント探しは最後です。

この際、自分だけでは判断できない部分については、自分側に立って全体を整理する別の専門家を持つ方法もあります。

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