クロージング付近で必要となる対応
- 最終金額が判明するのはクロージング日付近であり、そこで重要な対応が集中する
- 海外送金を迅速に行うには、国際送金サービスのアカウントを開設し利用するとよい
- クロージング書類への署名対応は、委任状が使えるか早いタイミングで確認する
- アメリカ大使館での公証サービスも、予約自体はなるべく早くに行うことが重要
オファーが受理されてからクロージング日まで、一般的には30~40日程度あります。
購入は決まっており、あとは契約書にサインをしてお金を振り込むだけなのだから、余裕だろうと感じる日数ではないでしょうか。
しかし実際には、ローンの本審査を別とした場合、クロージング直前に買主側の対応が集中しやすく、しっかりと準備をしておかなければこちらの対応が原因でクロージング日を過ぎてしまう可能性も十分にあります。
そこで今回は、クロージング直前にどのような対応が必要になるのか、実際の流れに沿って注意点とあわせて解説します。
クロージング直前にある2つの対応
クロージング直前で買主が行う重要な対応は、大きく分けると2つあります。
1つ目が「購入に必要な最終金額の送金」、
2つ目が「最終的なクロージング書類への署名」です。
「購入価格はオファーが受理された段階ですでに決まっているのだから、直前と言わず早い段階で送金してしまえばよいのでは」と思うかもしれません。しかし、クロージング時に必要となる金額は、単純な物件価格だけでは決まりません。
オファーが受理された後には、インスペクションによる物件調査、登記情報の確認、ローンの審査、火災保険の手配など、さまざまな手続きが進みます。これらにはもちろん費用が掛かります。
そしてこれが日本の不動産取引とは違う常識なのですが、これらの支払いは調査会社、ローン会社、保険会社へと個別には支払いません。基本的に売主への支払いと同様、すべてタイトル会社を通して、精算された金額をまとめて支払うのです。
このために、最終金額が判明するのは各種調査や保険手続きなどすべてが終わった後であり、必然的に一番最後のタイミングとなってしまいます。
署名を行う最終的なクロージング書類も、この金額が記載されることから、同じく最後のタイミングで完成します。
その結果、最終金額が確定し通知されるのがクロージング日の前日というケースも少なくないということは覚えておいてください。
以上のことからクロージング日の数日前から当日にかけては、最終確認や修正など重要な対応が集中します。この期間は旅行の予定などを入れたりせず、すぐに連絡を確認し、送金や署名のために動けるくらいに予定を空けておくことが大切です。
国際送金における実務上の注意点
ここからは、先ほどお伝えしたクロージング直前に行う2つの対応について、それぞれの注意点を掘り下げていきます。
まず1つ目の「購入に必要な最終金額の送金」についてです。
ここでまず覚えておきたいのは、日本の銀行から、海外に数千万円規模のお金を送金するのは、大変ということです。
もちろんできないということはありませんが、窓口でそれが何の目的か聞かれ、証拠書類を求められ、その場ですぐに送金とならず審査を経て数日後というのも珍しくありません。
急ぎでなければそれでも問題ありませんが、クロージング日前日に判明した金額の送金手続きにおいては、1日でも早く送金してもらえなければペナルティーが発生してしまいます。
そこでお勧めするのが、「Wise」という国際送金サービスです。
https://wise.com/
Wiseは銀行と少し異なり、国際送金に特化したサービスです。出金はあらかじめ決めている「不動産購入に使う銀行口座」から行いますが、送金先としては一度Wiseが管理する国内銀行口座を経由して、そこからタイトル会社の口座へと送金されます。

送金サービスとして、1度に最大1億5,000万円までの高額送金に対応しており、オンライン操作のみで基本的には送金目的の証拠書類などを求められず迅速に対応してくれます。
加えて、銀行とWiseでは為替レートや手数料体系が異なるため、数千万円規模の送金になると手数料にも大きな差が生じます。過去の事例として、45万ドルの送金に必要な費用をWiseとメガバンクで比較したところ、Wiseの方が40万円ほど安く送金できています。
アカウント開設はインターネット上で本人確認書類をアップロードするだけですので、早いタイミングで開設しておき、手付金の支払いもWiseにて行うことをお勧めします。
なお、Wiseを利用する際には1点だけ注意事項があります。それは、「Wiseが管理する国内銀行口座を経由する」という仕組み上、事前に何も言わないとローン会社からのチェックで口座確認が入り手続きが止まる可能性があるということです。
これを避けるために、まずWiseという国際送金サービスを利用する旨をローンエージェント経由で伝えた上で、送金した後はその送金証明もすぐメールで送るようにしましょう。
Wiseの管理画面から送金証明書をダウンロードできますので、それとあわせて審査で提出している通帳に出金記録を記帳しスキャンしたデータを送れば完璧です。
実際の対応において、これがなかったために1日分のペナルティーが発生したケースもありますので、最終金額の送金後はすぐにATMなどで記帳できる体制を準備しておけると安心です。
署名対応に関する必須の確認事項
次に2つ目の「最終的なクロージング書類への署名」に関する注意点です。
これは、現金一括で購入する場合それほど大変なことはありません。電子署名で対応できることが多く、クロージング日前日などに届く電子署名依頼のメールを開封し署名対応するだけです。
電子署名自体はそれまでの間にオファー受理後の基本契約や、管理会社や保険会社との契約で何度も対応しているはずですので、悩むことはまったくないはずです。
問題は、ローンを利用して購入する場合の署名です。ローンを利用する場合には、借用証書など融資に関する重要な書類が加わることから、現状はまだ電子署名に対応していないケースが多いです。
この場合どうなるかと言うと、タイトル会社で、公証人立ち会いのもと、本人が直接署名することが原則的な対応です。
しかし、当然ながら日本に住んでいる人にとってそんなに気軽に現地へは行けません。
そこで代わりとなる選択肢が、多くの場合以下の2つです。
1.委任状を使い、代理人に署名をしてもらう
2.日本のアメリカ大使館で、公証人立ち会いのもと自分で署名する
当然ながら、便利なのは委任状です。クロージング書類が完成するのはクロージング日直前ですが、委任状への署名自体は事前に行えますので、自分のタイミングで余裕を持って手続きを行うことができます。
しかし、残念ながら希望すれば必ず委任状の利用が認められるわけではありません。これはローン会社側の判断によるもので、本人による署名を必須のものとして求められるケースもあります。
こうなると、クロージング書類が完成した後に、大急ぎでアメリカ大使館で署名を行わなければいけません。さらにはその書類がアメリカのタイトル会社へ到着し確認が完了してからクロージングとなるため、国際郵便の手配も必要になります。
このケースが、アメリカ不動産の購入で一番忙しく心臓に悪いパターンです。
まずはオファーが受理された後、クロージング書類に委任状は利用できるのか確認しましょう。そうして上記1か2のどちらの対応になるのか把握し、そのための準備を事前に進めることが重要です。
ちなみに、委任状を使用する場合でも、その委任状への署名はやはりアメリカ大使館で公証人立ち会いのもと自分が行う必要があります。そのためローンを利用する場合は、ローン会社にもよりますが、現状たいていのケースでアメリカ大使館へ行く必要があります。
公証対応は予約のタイミングに注意
最後に、アメリカ大使館での署名対応に関する注意点をお伝えします。
アメリカ大使館での署名とは、分かりやすく言えば「間違いなく本人が署名しました」とアメリカでの公証資格を持った人が証明してくれる手続きです。パスポートなどの身分証明書を提出し、署名する人が間違いなく本人であることを確認された上で、公証人の目の前で署名することによりその証明書を発行してくれます。
申込方法としては、まずアメリカ大使館のWEBページを開き、そこで「公証サービス」を予約します。その上で予約した時間にアメリカ大使館を訪問、署名対応をするという流れになります。場所は、東京、札幌、大阪、福岡、那覇の5か所どこでも大丈夫です。
https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/notarials-ja
当日の注意点としては、上記WEBページ内に注意事項が書かれていますので、そちらをご参照ください。
ここでお伝えしたいのは、当日までの注意点です。それは「予約のタイミング」です。うっかりするとこれが大きな問題になります。
アメリカ大使館での公証サービスは、完全予約制です。時期にもよりますが、枠自体が少ないため、向こう一週間くらいは予約が埋まっていて予約できないということもあります。
もしもこの予約を「クロージング書類が完了してから」と考えていた場合、大変なことになります。
なぜならクロージング書類が完成するのはクロージング日の直前であり、そこから予約をしようとしても予約枠が空いているとは限らず、一週間後にようやく予約が取れたとなればその分のペナルティーが確実に発生してしまうからです。
そのため、アメリカ大使館での公証サービスは、委任状の利用ができるか確認し回答が返ってきたら即座に予約することをお勧めします。
もし委任状が利用できない場合は、クロージング書類が完成するタイミングが分からないため、クロージング日前日を中心に複数予約しておきましょう。複数予約しても前日までならキャンセルができますので、書類の完成にあわせてどれかに行くというイメージです。
なお、キャンセル自体にペナルティーはありませんが、あまり多く枠を押さえすぎたり、キャンセル連絡を忘れたりすると他の人に迷惑がかかりますので、その点はお気を付けいただければと思います。
そうして署名が完了した後は、原本を急ぎタイトル会社へ送る必要があります。基本的にはこの原本確認が終わってクロージングとなるため、これは通常の郵送サービスではなく、FedExなどの速達サービスを利用しましょう。
https://www.fedex.com/ja-jp/shipping/services/international-priority.html
発送には送付先の住所、担当者名、電話番号などの情報が必要になります。これは事前に用意しておけるものですので、ネット上から早めに速達サービスの申し込みを行い、必要な情報を確認し埋めて、当日までに伝票を用意しておけるとスムーズです。
重要なのは、公証の予約だけではありません。「予約→署名→発送→アメリカ到着」までを一つの工程として逆算することが、クロージングを遅らせないためのポイントと言えます。
まとめ
アメリカ不動産の購入は、クロージング日付近に重要な対応が集中します。
この理由は、すべての支払いをタイトル会社経由で行うために、各種調査や保険手続きなどすべてが終わった後でしか最終金額が判明しないからです。クロージング書類の完成もまた、これに伴いクロージング日付近となります。
最終金額の送金に関する注意点としては、Wiseなどの国際送金サービスで事前にアカウント開設しておくことです。これにより迅速に、安く、国際送金を行えます。ただし、送金した後はその送金記録もすぐにメールで送ることが重要です。
クロージング書類への署名対応に関する注意点としては、早いタイミングで委任状が使えるか確認することです。いずれにしろアメリカ大使館での署名手続きは必要となりますが、委任状が使えない場合重要な対応がクロージング日直前に殺到することとなります。
アメリカ大使館での公証サービス予約は、委任状が使えるかどうか分かったタイミングですぐに行うことが重要です。そうして署名が完了したら、これも事前に予約しておいた海外配送サービスでその日のうちにタイトル会社へと書類を発送しましょう。
以上の対応がすべて完了すれば、クロージング対応は無事終了です。
