物件選定における具体的な流れ
- 物件を探す際に大切な観点は、「目的」と「価格帯」と「ロケーション」の3つ
- 実際に現地へ行き物件を見ることは重要であり、不動産エージェントに確認を依頼する
- オファーを出す際には、受理される確率の方が低いという心構えを持っておく
- オファーが受理された後、インスペクション結果を確認して物件選定は全て完了
アメリカで不動産を購入する際、日本とは少し違う感覚が必要になるのが「オファー」です。
気に入った物件が見つかったからといって、その物件をそのまま購入できるとは限りません。購入希望者は、希望価格や購入条件などを記載したオファーを売主に提出し、売主から選んでもらう必要があります。
条件の良い物件であれば複数の買主からオファーが入り、買いたくても買えないことも珍しくありません。
そのため実際の物件購入では、「物件を探す→オファーを出す→受理されなければ別の物件を探す」という作業を何度か繰り返すことが求められます。
本記事では、これら一連の流れに沿ってその時々で注意すべき点を解説します。
物件選びにおける3つの観点
最初に行うのが、オファーを出す物件の選定です。
不動産投資に慣れた人は、物件選定において「現地の人が住みたいと思う物件を選べばいい」と言ったりしますが、日本人からすると現地の人の感性がまず分かりません。
そのため、結論として最初のうちは不動産エージェントのアドバイスを素直に受け入れ、予算などの条件にあう物件の中でお勧めされるものの中から選択することが推奨されます。
とは言え、不動産エージェントが本当に信頼できるのかという問題もあります。そこで、まずは物件選びにおける特に重要な要素として、3つの観点を押さえておきましょう。
1.「目的と予算に合った物件か」
2.「適切な価格帯か」
3.「ロケーションが良いか」
まず考えるべきは、何のために不動産を購入するのかという「目的」です。
例えば賃貸収入を重視するのか、長期的な物件価格の値上がりを期待するのかによって、選ばれるエリアは変わってきます。
あるいは節税目的であれば木造中古、予算がある程度あるならアパート1棟など、物件タイプも変わってきます。
単純に「高い物件ほど良い」というものでもないため、自分の投資目的と予算を不動産エージェントに伝えたうえで、それに合った候補物件を出してもらうようにしましょう。
次に重要なのが、同じエリア、同じ物件タイプでの「価格帯」です。
ここでお勧めするのは、そのエリアの住宅価格中央値から20%程度高い価格を目安として狙うことです。
住宅価格の中央値付近は、一般的にその地域で取引に参加できる買い手の層が厚い価格帯です。そのため、購入時だけでなく将来売却する際にも、比較的買い手を見つけやすいというメリットがあります。
そこからさらに20%程度高い価格帯になると、住民の質が良くなります。住民の質が悪いと、修繕費がかさむなど管理コストが上がってしまうため、目安として中央値よりやや高いあたりが最もお勧めという話になります。
最後に重要なのが、「ロケーション」です。
同じエリア、同じ物件タイプ、同じ価格帯でも、マップで見てみると物件がある場所はさまざまです。その中で、条件が良い立地の物件を選ぶという意味になります。
この場合の条件としては、単に景色がきれいとか、街がおしゃれという意味ではありません。投資用住宅で特に重要になるのが、「スクールスコア(学区)」と「フリーウェイ(高速道路)へのアクセス」です。
Zillowなどでその物件情報を見れば、スクールスコアが書かれています。10点満点で、小中高と3つの区分があるイメージです。このスコアが各7点以上、合計21点以上というのが具体的なお勧め目安です。「現地の人が住みたいと思う物件」として、アメリカではこのスクールスコアが非常に重視されます。
フリーウェイへのアクセスは、日本でいう「駅チカ」ということです。アメリカは車社会のため、日本で住宅を選ぶときに「駅から徒歩何分か」を気にするのと同じように、アメリカでは「フリーウェイまで車で何分か」を気にします。
お勧めの目安としては、「フリーウェイの出入口から5マイル以内、できれば2マイル以内」という感じです。不動産エージェントから候補物件が出てきた際には、これら二つの条件を確認すると、良い物件を見つけるのに大変役立ちます。
現地は人間の目で確認する
物件候補をある程度絞ったら、やはり重要になるのが、現地で実物を確認するということです。
アメリカの不動産情報はオンライン化が進んでおり、日本にいながらでもたくさんの写真で外装や内装を詳しく確認できます。しかし、掲載写真は物件が魅力的に見えるよう撮影されているのが当然ですし、明るさや色味が調整されていることもあります。
実際に現地へ行ってみると
・天井や壁に水漏れの形跡がある
・隣にボロボロの家があって雰囲気が良くない
・前面道路の交通量が多く騒音が気になる
など、掲載写真だけでは分からない物件情報が見えてくることがあります。
とは言っても、日本居住者が現地を確認するのは非常にハードルが高いです。そこで、候補を1~2件程度まで絞ったら、現地の不動産エージェントに物件を確認してきてもらうよう依頼しましょう。
動画や写真を撮影してきてもらうか、あるいはスマートフォンのビデオ通話で日本と現地をつなぎ、その場で家の中を見せてもらうということも考えられます。
ただし、こういったサービスは必ずしも引き受けてもらえるわけではないという点には注意が必要です。むしろ紹介などの人間関係がなく、初めてアメリカ不動産の購入を検討しているという自己紹介だけでは、どちらかと言うと引き受けてもらえない可能性の方が高いです。
基本的に不動産エージェントは、売買が成立して初めて報酬を受け取ります。車で移動して物件を確認するには相応の時間がかかり、その結果「やっぱり買いません」となってはタダ働きとなってしまうため、人間関係や実績のない人は警戒されてしまうのです。
あるいはそういった場合、見に行った物件に多少問題を感じても「良い物件だと思います」と強引に勧められる懸念も出てきてしまいます。
そのため理想的なのは、既に取引関係のある人から、信頼できるエージェントを紹介してもらうことです。
自分にとっては初めての取引でも、紹介者がそのエージェントと何十件もの取引をしているのであれば、紹介者との関係もありいい加減な対応はされにくくなります。
そうした紹介先がない場合には、最初から1人に決めず、複数のエージェントに同じ条件を伝えてみる方法もあります。
どの程度詳しく物件を探してくれるのか、質問に対してどこまで具体的に答えてくれるのかを比較し、最も親身になって対応してくれる人に依頼するのも一つの方法です。
オファーが通る確率は50%以下
現地確認まで行い、「この物件を買いたい」と判断したら、いよいよオファーを出します。
ここでもまた、買主である自分が判断しなければいけないことがいくつかあります。それは、購入価格、キャンセル期間やクロージング日、option money(契約一時金)の金額といった諸々の希望条件です。
アメリカには交渉文化があり、売主側が50万ドルで物件を売りに出していたとしても、48万ドルでオファーを出すことも、あるいは人気物件でどうしても買いたいからと52万ドルでオファーを出すことも、特に失礼でも何でもない普通のことです。
同じく、通常はキャンセル期間が1週間、クロージング日は30日後が目安ですが、「日本からの購入のためクロージング日を40日後にしてほしい」と希望条件を出し交渉するのもまったく問題ありません。実際問題として、ローンを利用するのであればクロージングまである程度余裕がほしく、クロージング日を延ばしてもらうのはよくあります。
この際、知識として覚えておくと良いのが、option moneyです。これは手付金とあわせて支払いますが、キャンセル期間中にキャンセルをしても返却されないお金となります。キャンセルせず購入すれば、購入金額の一部に充当されます。
この金額が大きいほど、購入意思の強さを示すことができ、オファーの通る確率が高くなります。目安としては500ドル程度であり、不動産エージェントが物件に応じてある程度お勧め金額を教えてくれるはずですが、最終判断は自分に求められるものとなります。
そうした条件を決定し、オファーを出す際の留意事項として特にお伝えしておきたいのは、「受理されないのが普通だと考える」ということです。
2026年のRedfinデータによると、ダラスの住宅には平均して約2件のオファーが入っています。つまり単純計算で、オファーが通る確率は平均して50%程度ということです。条件の良い投資物件だけを狙った場合、オファーが通る確率は「20~30%程度」と言われたりもします。
そのため、実際の流れとしては概ね次のようになります。
1.不動産エージェントから候補物件を紹介してもらう
2.その中から1~2件を選び、現地確認を依頼する
3.最も良い1件を選びオファーを出す
4.受理されなければ、再び1に戻って候補物件をもらう
この作業は、想像以上に精神的な負担があります。
仮に1億円の物件を購入したい人がいたとします。複数の候補から「この物件が良い」と決め、現地を確認してもらい、いよいよオファーを出します。その時点で、気持ちの上では既に「1億円の家を買う決断」をしています。当然ながらこれは非常に大きな決断です。
ところが、オファーが通りませんでした。すると、また別の物件を探して、「今度はこの1億円の家を買おう」と決断しなければなりません。
こうなると、実際に支払う1億円は一度だけですが、心理的には何度も1億円の買い物を繰り返しているような感覚になります。何件か連続してオファーが通らないと、そこで疲れて購入そのものをやめてしまう人も少なからずいるのです。
そのため、オファーを出す際には「受理されないのが普通」と考え、特定の物件に思い入れを持ちすぎない心構えも重要です。
以上のことをデメリットに感じる人もいますが、特定の物件を確保した状態でゆっくり検討したい場合、不動産会社から在庫物件型として購入することになります。この場合、20~30%の仕入れ価格が上乗せされるケースが多いです(実際に他社で提示された見積もりを元に計算しています)。
アメリカの不動産市場は「自由競争」が一つのキーワードであり、だからこそ市場物件型として安く購入することができるとも言えるのです。
最後にインスペクションを必ず行う
オファーが受理されれば一安心ですが、厳密に言えばまだ物件選びは終わっていません。
物件選びとして最後に行う大切な作業が、インスペクション(物件調査)です。
・屋根
・基礎や構造部分
・エアコンなどの空調設備
・給排水
・電気設備
・窓やドア
・給湯設備
・建物外部
など、インスペクションでは可能な限り物件を隅から隅まで確認し、その結果をレポートとして受け取ります。
費用は住宅の大きさや地域によって異なりますが、一般的な住宅で300~500ドル程度が一つの目安です。
レポートは写真を大量に含み、50ページ程度になることも珍しくありません。それをもとに、キャンセル期間内で物件購入の最終判断を行うのです。
とは言え、素人はこれを見てもまず間違いなくよく分かりません。そのため、実務上は不動産エージェントにアドバイスを受けるのが一般的です。基本的に押さえておくべき重要なポイントは把握されていますので、適切な判断を伝えてくれるはずです。
交渉力のある不動産エージェントであれば、インスペクション結果を見ながら
「これは売主に修理を求めた方がよい」
「この程度なら修理せず価格を少し下げてもらう交渉をしよう」
など売主側と交渉もしてくれます。
ちなみに、現地の不動産エージェントに確認したところ、インスペクション結果を見て購入をキャンセルした案件は、おおよそ100件やって1件あるかないか程度とのことでした。
ただそれでも、インスペクションは省略しないことが重要です。数千万円、場合によっては1億円を超える不動産取引です。数百ドルの調査費用を惜しんだ結果、大きな修繕が必要な住宅を購入してしまえば、損失ははるかに大きくなります。
オファーが通ったらできるだけ早くインスペクションを手配してもらい、その結果を確認したうえで最終的な購入判断をする。ここまで行ってようやく物件選定は全て完了と考えた方が、予期せぬ事態は起こりません。
まとめ
アメリカ不動産を購入する場合、「物件を探す→オファーを出す→受理されなければ別の物件を探す」という作業を何度か繰り返すことになる可能性が高いです。
これらにおいて、物件を探す際に大切なことは「目的」と「価格帯」と「ロケーション」です。自分の目的に合うエリアと物件タイプから、中央値+20%程度の価格帯で、スクールスコアとフリーウェイからのアクセスが良い物件を選ぶことをお勧めします。
そうして候補を絞ったあとは、実際に現地へ行き物件を見てみることも重要です。日本居住者の場合これは難しいため、不動産エージェントに依頼する必要があります。その前提として、信頼できる不動産エージェントを見つけることは欠かせません。
オファーを出す際にも諸々の条件を自分で判断する必要はありますが、一番重要なのは「受理されないのが普通」という心構えを持つことです。何度かオファーを断られる中で心が折れてしまう人もいますので、アメリカの自由競争文化として前向きに受け止めましょう。
そうしてオファーが通った後は、速やかにインスペクションを依頼し結果を確認して物件選定は全て完了です。その判断と交渉は不動産エージェントに任せましょう。ここでもやはり、信頼できる現地の不動産エージェントは重要になります。
