ローン審査における注意事項
- 事前審査では、購入に必要な自己資金を保有しているかが確認される
- 本審査では、購入資金の出所が確認され、必要な確認書類はローン会社によって異なる
- 不動産購入に使う銀行口座を最初から一つに決めておくことで、スムーズに審査が進む
- 進行の遅れによるペナルティーが発生しないよう、ローンエージェントとは密に連携する
アメリカのローンに関する概要は、このガイドの第二章記事において解説させていただきました。
この記事ではさらに一歩踏み込んで、実際にローンを申請する場合の実務に関して解説させていただきます。
ここで注意が必要になるのが、アメリカでは「事前審査」と「本審査」の2種類の審査があり、それぞれで全く異なった観点から審査がなされるということです。
この違いを知らないまま手続きを進めると、「事前審査は簡単に通ったのに、本審査になった途端に大量の追加書類を求められた」ということにもなりかねません。
そこで今回は、日本居住者がアメリカ不動産でローンを利用する場合を想定して、事前審査と本審査では何が確認されるのか、また審査をスムーズに進めるために何に注意すればよいのかを解説します。
事前審査は自己資金の確認
アメリカ不動産のローン審査は、大きく分けると物件探し前の「事前審査」と、購入する物件が決まってから行われる「本審査」に分けて考えることができます。
これら二つは、単に「より厳密に審査する」というだけでなく、そもそも確認されるものが違うのだと考えておいた方が対応しやすいです。
まず事前審査ですが、この段階で確認されるのは、購入に必要な自己資金を保有しているのかということです。
たとえば、購入価格の50%まで融資を受けられるローンがあるとします。
この場合日本の銀行口座に5,000万円の自己資金があることを確認できれば、単純計算で「最大1億円の物件に対して5,000万円まで融資できる」という大まかな目安を出せます。
事前審査とは、端的に言えばこの目安を出すだけの簡単な審査です。
そのため、確認書類もまた非常に簡単なものとなっています。ローンによって多少異なりますが、基本的にはパスポートのスキャンデータと、銀行口座の残高が確認できる資料があれば、それで事前審査は行われます。
残高資料といっても、金融機関が正式に発行する残高証明書でなく、インターネットバンキングの残高画面や、通帳のコピーだけでOKという場合も少なくありません。
日本での源泉徴収票や納税証明書、確定申告書なども不要です。ローンの中にはそれらが必要な種類のものもありますが、外国人向けのローンとしては借り手の日本での所得より、自己資金や対象物件の収益性を重視するローンの方が一般的です。
以上のように簡単な審査であるため、審査に要する時間としても1~2日くらいです。ローンエージェントへ上記のデータを渡してから、たいてい翌日にはPre-Approval Letterを受け取ることができます。
本審査は購入資金の出所
次に本審査ですが、この段階になると借り手の自己資金だけでなく、対象物件の鑑定結果や想定賃料、ローン返済のための口座情報など、さまざまな情報を確認します。
これらの中でも「確認されるもの」として特に強く意識しておきたいのが、「購入資金の出所」です。
この部分は日本人に馴染みがないため戸惑いやすく、きちんと理解をしておかなければ本審査対応で非常に苦労をしてしまう原因にもなりますので、要注意と言えます。
アメリカでは、マネーロンダリング対策や不審取引に関する厳しい規制の枠組みが設けられています。これは住宅ローン会社なども対象となるため、不動産購入に使われる資金については、その出所を説明できることが強く求められます。
たとえば、買主の銀行口座に5,000万円の残高があったとします。
これが以前から(2ヶ月以上前が目安)口座に存在しているお金であれば、「自分が昔から所有しているお金」という説明だけで問題はありません。
ところが、ローン申請の2週間前に別の口座から5,000万円が振り込まれていたとすれば、「この5,000万円はどこから来たのか」という確認が必要になってくるのです。
例えばこれが投資信託を解約して得た資金であれば、その解約を確認できる書類が求められます。
例えばこれが自分の会社から個人へ移した資金であれば、その会社は本当に自分のものなのか株主構成の確認が求められます。この際、自分一人が100%株主でなく、親など別の人も株主にいた場合、その人との関係や会社としての意思決定の妥当性を証明する書類まで求められる可能性が高いです。
ローン申請の2週間前に300万円程度の入金があった場合でも、それが購入資金に充てられるものだと判断された場合は、同様にその出所を証明する書類が求められます。
なお、それでは100万円程度の入金ならいいのか、どこまで厳格に証明資料が求められるのかといった細かな判断は、ローン会社によります。そのため必要な書類はローン会社次第で、「何が必要かはその時にならないと分からない」と言えます。
ローン申請において、「準備に時間がかかるものもあるだろうから事前に必要書類の一覧がほしい」と考える人は多いです。しかし、以上の理由からアメリカでローン申請をする場合、残念ながらそれは難しいのです。
使用する銀行口座は一つに決めておく
以上を踏まえたうえで、ローン申請時の注意点をお伝えします。
それは、「不動産購入に使う銀行口座」を最初の段階で一つに決めておくことです。そうして、以下のすべてはその口座にて行うようにします。
・事前審査で提出する残高証明
・手付金を支払う口座
・本審査で提出する通帳履歴(過去2ヶ月分)
・クロージング時に最終金額を支払う口座
必ず同一口座でなければいけないという決まりはありませんが、口座を変えるたびに「このお金はどこから来たのか」という説明が多く求められるようになります。
例えば事前審査ではA銀行の残高5,000万円を提示して、手付金はB銀行から支払い、最終金額をC銀行から支払ったとします。この場合、A、B、Cそれぞれの口座で過去2ヶ月分の取引履歴を求められます。そのどれかで大きな金額の入金履歴があれば、その出所に関する証明書類も追加で求められます。
実際にあった事例として、最終金額を振り込んだ際、それがこれまで審査で提出していた銀行とは異なる銀行からの送金だったために、金額が正しくてもその口座情報の確認が終わるまで契約締結が延期されたということは本当にあります。
そうならないためにも、「不動産購入に使う銀行口座」を最初の段階で一つに決めておくことは重要なのです。
期日を超えるとペナルティーがある
アメリカの不動産取引では、オファーが受理されると、まず基本契約として「○月○日にクロージングを行う」という期日を設定します。この日付を「クロージング日」と言います。
ここで言うクロージングとは、分かりやすく言えば「物件名義の変更と売主への入金手続き」を行うために必要なすべての手続きの完了を意味します。
ここで重要となるのが、実際の契約締結がこのクロージング日を過ぎてしまった場合、ペナルティーが発生してしまうということです。
ペナルティーの具体的な金額は取引によって異なりますが、実際にあった一例では「1日につき200ドル」というイメージです。
「ローン審査がどれくらいスムーズに進むか」は、期日を無事守るうえで、特に大きな影響があるものとなります。
先ほど例としてA,B,C銀行それぞれの口座を利用する場合は審査書類が増えるという話をお伝えしましたが、ローン審査が長引いてしまうということは、単に手間がかかるという話だけにとどまりません。ペナルティーの発生へとつながってしまいます。
もちろんペナルティーは無条件に買主が負担するものではなく、売主やローン会社に責任があればそちらが負担する場合もあります。
しかしローン審査には一つ一つの確認項目ごとにある程度妥当な期間というものがあり、確認項目が多くなってしまったことによる審査期間の長期化とそれによるペナルティーは、基本的には買主側の責任となります。
そのため、確認項目についてはできるだけ減らすよう意識し、この記事でお伝えした内容をもとに事前準備をしておくことは非常に重要です。
実際のところ、そうした上でなお審査対応はクロージング日ギリギリになってしまうことの方が大半です。
この理由としては、アメリカの銀行ならネットですぐダウンロードできる証明書が日本の銀行だと入手に時間がかかったり、あるいはそうして入手した書類を英訳しその内容が正しい旨の証明書もまた手配しなければいけなかったりと様々です。
もしも実際の購入で本審査のフェーズに入った際は、ローンエージェントからのメールがあれば速やかに開封し、求められる対応は可能な限り迅速に手配することを強く推奨します。
まとめ
アメリカのローンは、事前審査だけを見れば1~2日で完了してしまいます。しかし、だからと言って甘く見ていると、本審査の際に大いに慌てることになります。
事前審査では、購入に必要な自己資金を保有しているのかが確認されるだけです。
これに対して本審査では、購入資金の出所という全く別のものが確認されます。
そのため事前審査の段階から一貫した口座として、あらかじめ決めておいた銀行口座の情報を提出し、手付金や最終金額の支払いもすべてこの口座から行うことが重要です。
準備不足により確認項目が多くなり、それが原因でクロージング日を過ぎてしまった場合、追加のペナルティー支払いが発生してしまいます。
そのような事態に陥らないよう、事前準備と、そして実際の進行においてはローンエージェントとの密なコミュニケーションを心掛ける必要があります。
