株式投資にないレバレッジ効果
- レバレッジ効果により、S&P500より不動産投資の方が期待利回りは高くなる
- リファイナンスにより、1つの物件に対して何度もレバレッジ効果を得ることができる
- アメリカ不動産への投資価値は、単年での利回りを指標として他と比較することはできない
- アメリカの金利は日本より高いが、海外事業としてそれ以上の利益が出るかが重要である。
アメリカ不動産を検討する中で、米国へ投資するのであれば、S&P500に連動する投資信託やETFへ投資すれば手間もかからず十分ではないかという疑問が出ることがあります。
S&P500は、米国を代表する企業へ幅広く分散投資でき、投資信託などを通じて数千円程度から始められます。必要になれば比較的換金しやすく、物件の選定や管理も必要ないため、非常に優れた投資先であることは間違いありません。
一方、まとまった自己資金を持つ人が、長期的な資産形成という観点から両者を比較する場合、アメリカ不動産には株式投資にない大きな強みがあります。それが、ローンによるレバレッジ効果です。
この記事では、このレバレッジ効果に関して、具体的な数字とあわせてその魅力を解説します。
同じ自己資金でも、運用できる資産額が違う

上の図では、自己資金3,000万円をS&P500へ投資する場合と、同じ3,000万円を頭金にして6,000万円のアメリカ不動産を購入する場合を比較しています。それぞれの利回り、値上がり率は、過去の実績にならった数値です。
まずは単純な話として、株式投資では、3,000万円が10%上昇すれば利益は300万円です。
一方、6,000万円の不動産が10%上昇すれば、値上がり額は600万円になります。自己資金3,000万円に対して見れば、20%に相当します。
つまり、自己資金より大きな資産を保有することで、自己資金に対する収益を高めることが可能になります。これがレバレッジ効果です。
もちろん、ローンを利用すれば利息が発生します。しかし、賃貸中は家賃収入を返済原資にできます。家賃から利息や管理費、固定資産税などとあわせてローン元本を返済すれば、むしろ借入残高が減った分だけ自己所有部分が増えていきます。
その結果、10年後には物件価格が値上がりしているだけでなく、ローン返済が進みその分も自己所有分として自身の資産に組み込まれて行きます。
その結果が、上の図でいう「自己所有分8000万円」です。このレバレッジの有無が、株式投資よりも不動産投資を勧める一番の理由と言えます。
しかも、この「ローン利用によるレバレッジ効果」は、1つの物件に対して1度しか使えないわけではありません。
ある程度返済が進んだタイミングで、「リファイナンス」を行うことで、1つの物件に対して何度もその恩恵を受けることが可能となっています。
リファイナンスで、増えた自己資本を再投資できる
リファイナンスとは、「所有物件を担保にしたローンの、別銀行への借り換え」です。

例えば、6,000万円で購入した物件が10年後に1億円となった際、この物件を担保に別銀行にて5,000万円の借り換えを行います。
新しく5000万円借りて、既存のローン2000万円を返済すれば、単純計算で3,000万円を手元に残せます。
この3000万円を頭金として、新たに二件目の物件を購入するのです。これもまた、レバレッジの活用です。この場合、手元から1円も出さずに、追加の物件を購入できることを意味します。
そうしてさらに10年が経過した場合の図が、以下のものです。

このシミュレーションで20年後の金額は、株式投資が1億1,400万円、不動産投資でリファイナンスによるさらなるレバレッジを活用した場合には2億1,900万円となっています。
パッと見た単年での利回りは株式投資の方が大きく見えますが、実際には長期で比較すると、不動産投資の方がこれだけ大きなリターンを得られます。これが、株式投資にないレバレッジ効果です。
なお、レバレッジは利益を大きくする一方で、価格下落時の損失も大きくします。しかし、これについてはまず一つ、適切な地域と物件を選ぶことでリスクを抑えることができますし、そして何よりアメリカ不動産投資特有のリスクコントロールの仕組みが存在しています。
これはまた、次回の記事で詳しく解説させていただきます。
単年の利回りでは、不動産投資の成果を測れない
投資を比較するとき、多くの人が最初に確認するのが利回りです。
例えば、5,000万円の物件から年間360万円の家賃を得られるなら、表面利回りは7.2%です。
利回り:360万÷5000万=7.2%
しかし、アメリカ不動産を10年以上保有するのであれば、購入時点の利回りだけで判断することには問題があります。
第一に、家賃は保有期間中ずっと同じではありません。地域の人口や所得、住宅需要などを背景に家賃が上昇すれば、購入価格に対する家賃収益は年々高くなっていきます。
購入時の家賃だけを使って、10年後や20年後までの収益性を判断するのは適切ではありません。
第二に、保有している物件の価格が上昇すると、現在の家賃を現在の物件価格で割った利回りは低下します。
例えば、年間家賃が400万円に値上がりしつつ、物件価格が5,000万円から6,000万円に上昇した場合、その物件の表面利回りは7.2%から6.7%へ下がります。
利回り:400万÷6000万=6.7%
保有する物件の価格が1,000万円上昇することは、所有者にとって喜ばしいことで間違いありません。にも関わらず、その物件の利回りは低下したと言われるのです。これは明らかにおかしなことではないでしょうか。
この矛盾は、単年の利回りが長期的な投資成果を測る指標として十分でないことを意味しています。
アメリカ不動産の成果を判断するのであれば、家賃の手残りだけではなく、家賃の上昇、物件価格の上昇、その他購入や売却にかかる諸経費まで含めて、例えば10年間で自己資金がどれだけ増えるかを見る必要があります。
そして10年間の総合リターンを、複利ベースで1年当たりのリターンに換算すれば、S&P500など他の投資対象とも比較しやすくなるのです。
そうして導き出されるアメリカ不動産の実際の利回りは、その安定性に比べて十二分な高さになります。なお、もし実際の数値に興味がある場合は、物件のエリアや価格帯によっても異なりますので、ぜひ一度具体的なシミュレーションを求めてみてください。
アメリカの高い金利でもローンを利用する理由
レバレッジの話をすると、「アメリカは銀行からお金を借りる金利が高いのではないか」という疑問がよく出てきます。
確かに、日本の低金利に慣れた人から見れば、アメリカの住宅ローン金利は高く感じられます。
米国の一般的な30年固定住宅ローンの平均金利は、2026年7月時点でおおよそ6.5%です。日本居住者がアメリカで投資用不動産を購入する場合の適用金利は、場合によってはこれよりもう少し高くなる可能性もあります。
しかし、金利の数字だけを日本と比較しても、投資としての良し悪しは判断できません。
日本とアメリカでは、インフレ率や家賃、資産価格、金融市場の構造が異なります。資金調達コストが高くても、その資金を使って得られる総合リターンがさらに高ければ、ローンを利用する合理性があります。
例えば海外で事業を行う場合、現地の人件費が日本より高いという理由だけで、事業性がないとは判断しません。海外事業として人件費以上の売上と利益が見込めるかを考えます。
不動産の金利も同じです。不動産事業における資金調達は、通常の事業における人件費や仕入れコストとほぼ同じ位置づけであり、どちらもトータルで損得を判断する必要があるのです。
また、現在の6%台は、2021年に記録した2.65%という歴史的な低金利と比べれば高い水準ですが、一方でアメリカの長い歴史の中で見れば低い水準とも言えます。Freddie Macの統計では、30年固定住宅ローン金利は1981年に18.63%を記録しています。

上の図の長期推移を見ても、1970年代後半から1990年代前半にかけては、現在より高い金利が長期間続いていました。したがって、現在の金利は特段高い水準にあるとは言えない状況です。
金利以上の利回りが期待できるのであれば、ローンを利用した方がレバレッジ効果により大きなリターンを得られます。もちろん、あくまでもその期待利回りが適切であれば、という但し書きはつきます。この点は、きちんとしたシミュレーションを作成し、その上で納得いくまで十分な確認を行うべきです。
しかしもしそこで十分な確証が得られたのであれば、金利は単なる負担ではなくなります。自己資金だけでは保有できない資産を購入し、その資産全体から大きなリターンを得るための必要コストになるのです。
まとめ
S&P500は、少額から始められ、換金性が高く、管理の手間も少ない優れた投資先です。
一方、アメリカ不動産では、ローンを利用することで自己資金以上の資産を保有し、レバレッジ効果を得て期待利回りを高くすることができます。さらに、リファイナンスで次の投資へつなげることも可能です。
金利は日本より高いものの、その金利を上回る総合リターンが見込めるなら、レバレッジを利用することは合理的な行動です。
ただし、この仕組みを利用するには、アメリカ不動産を購入できるだけのある程度まとまった自己資金が必要です。
したがって、アメリカ不動産とS&P500のどちらが推奨されるかは、単年で見た利回りの比較ではなく、レバレッジを無理なく利用できるだけの自己資金を持っているかどうかが一番重要と言えます。
