アメリカ不動産はじめてガイド

第1章

アメリカ不動産が
おすすめな理由

日本人が理解できない不動産の常識

読了目安:7分
基礎知識
  • アメリカ不動産は家賃が毎年見直され、基本的には値上がりしていく
  • 住宅価格は、短期的な下落があっても長期的には上昇し続けている
  • 住宅需要のあるエリアであれば、中古物件でも容易に売却できる
  • 以上の3つが組み合わさることで、安心して住宅を長期的な資産形成に利用できる

日本で不動産投資を経験した人ほど、アメリカの不動産取引の説明を聞いて違和感を覚えることがあります。

「年々物件が古くなっていくのに、家賃は毎年上がっていく」

「物件価格もまた毎年上がっていくため、新築が一番安い」

「20年、30年と保有した住宅を、一ヶ月程度で簡単に売却できる」

いずれも、日本の市場を前提にすれば真逆こそが正しいと感じます。日本では、築年数の経過とともに家賃や建物価格が下がり、古い住宅ほど売却が難しくなるという認識が一般的です。

しかし、アメリカでは、家賃を定期的に見直し、住宅を修繕しながら長く使用し、中古住宅として何度も売買する市場が形成されています。日本の常識をそのまま当てはめると、その特徴を正しく理解できません。

この記事では、日本人にとって特に理解しにくい、アメリカ不動産の3つの常識を解説します。

家賃は据え置くものでなく、毎年見直すもの

日本では、一度入居者が入ると、同じ家賃が長期間続くことが珍しくありません。

法律上、家賃を変更できないわけではありません。借地借家法では、税負担、建物価格、経済事情、近隣の家賃などに照らして現在の家賃が不相当になった場合、貸主または借主が増減を請求できるとされています。

しかし、貸主が希望するだけで自由に値上げできるわけではありません。入居者との協議がまとまらなければ、最終的には法的な判断が必要になります。

一方アメリカでは、賃貸借契約の期間満了や更新の際に、周辺の募集状況や物価、住宅需要を踏まえて家賃を見直す考え方が定着しています。州法や契約条件による違いはありますが、「毎年の更新時には条件が変わる」という前提で賃貸市場が動いています。

上の図では、2000年を100とした場合、アメリカの家賃物価指数が2024年に約228まで上昇しています。(参考にある日本の消費者物価指数は、約111までの上昇です)

もちろん、すべての物件で毎年家賃が上がるわけではありません。人口や雇用が減れば、家賃を下げなければ入居者が見つからないこともあります。物件の状態が悪ければ、周辺相場どおりの家賃を取ることもできません。

それでも、需要の強い地域を選び、適切に管理していれば、家賃収入額は毎年上がっていきます。購入時の表面利回りだけでなく、将来の家賃上昇を含めて収益を考えられる点は、アメリカ不動産の特徴です。

長期で見れば上昇し続けている物件価格

アメリカ不動産の大きな特徴は、家賃収入を得られることだけではありません。住宅そのものの価格が、長期的に上昇していくことも重要です。

過去の実績としてその動きを確認する代表的な指標が、ケース・シラー住宅価格指数です。

ケース・シラー住宅価格指数は、同じ住宅が再び売買されたときの価格を追跡することで、住宅価格の変化を測る指数です。新しく高額な住宅が増えたため平均価格が上がったという影響を受けにくく、既存住宅そのものがどのように値上がり、あるいは値下がりしたのかを確認しやすい点に特徴があります。

上の図では、2000年を100としたケース・シラー住宅価格指数が、2024年には約332まで上昇しています。単純化すれば、アメリカの主要都市の住宅価格は、この約24年間で3倍を超える水準になったことを意味します。

ただし、その過程が一直線だったわけではありません。

2000年代前半には住宅価格が急速に上昇しましたが、サブプライムローン問題と金融危機の影響を受け、2007年頃から大幅に下落しました。一時は、直前の高値から3割を超えて下がっています。

それでも、その後は再び上昇に転じ、およそ10年をかけて金融危機前の水準を回復し、さらにその後も価格は上昇を続けています。

この推移から分かるのは、アメリカの住宅価格には大きく下落する局面があるものの、長期で見れば物件価格は上昇し続けてきているということです。

日本でも、購入した物件の価格が上がっていくことはありましたが、アメリカほどの上昇幅ではなかった上に、今からさらに10年後20年後を見据えた時に、国内で過去と同様の値上がりが期待できるかは大いに疑問が持たれます。

なお、価格が大きく下がったときに、回復するまで売却せず保有を続けられなければ、この考え方は成り立ちません。そこで重要になるのが、家賃収入です。

図表を見ると、住宅価格が大きく下落した金融危機の時期にも、家賃物価指数は同じようには下落していません。住宅の売買価格には金利や金融市場の影響が強く表れる一方、人が生活するために支払う家賃は、比較的安定して推移するためです。

入居者から継続して家賃を受け取ることができれば、住宅価格が一時的に下がっても、慌てて売却する必要はありません。家賃収入を得ながら保有を続け、住宅価格が元の水準に戻り、さらに上昇するまで待つことができます。

つまり、アメリカ不動産における家賃収入は、日々の収益を生み出すだけではなく、物件価格の下落時にも物件を手放さず、長期的な値上がりを享受するための支えにもなるのです。

築年数よりも「住めるか、貸せるか」が価値を決める

日本とアメリカでは、住宅市場に占める中古住宅の位置づけが大きく異なります。

上の図では、住宅取引に占める既存住宅(中古物件)の割合が、日本はたった16%しかないのに対して、アメリカは86%となっています。

日本では新築住宅への需要が強く、築年数が古くなるほど物件としての評価が低くなる傾向があるため、中古物件はあまり売買対象になりません。

一方アメリカでは、中古住宅が例外的な商品ではなく、住宅市場の中心であることが分かります。

この違いは、投資の出口にも影響します。

不動産投資において、例えば投資用マンションなどでは、購入から20年、30年が経過した時に、誰が購入するのか、融資が付くのか、修繕費を差し引いても売却できるのかといった問題が出てきます。

不動産投資では、保有中の家賃収入だけでなく、「最後に誰に売るのか」を考えなければなりません。

日本では、築年数が進んだ物件は買い手が見つかりにくく、希望する価格では売却できないため、長期間保有せざるを得ないことがあります。このような状態は「塩漬け」と表現されたりします。

これに対して既存住宅の取引市場が大きいアメリカでは、自宅を探す個人や、賃貸用物件を探す投資家など、複数の買い手を想定できます。アメリカの買い手は、築年数だけで住宅を判断するわけではないからです。

築年数が経過していても、適切な修繕が行われ、住宅として十分に使用できるのであれば、売買の対象になります。

実際、現地の不動産エージェントと会話をしていると、もちろんエリアや時期にもよりますが、築25年程度の一軒家であっても売りに出されてから一ヶ月程度で売れてしまうのは普通のことと言われます。

中古住宅が市場の中心として流通していることは、長期保有後の出口を考えるうえで大きな利点の一つです。

3つの常識は、一つの仕組みとしてつながっている

ここまで説明した、家賃の見直し、住宅価格の長期的な上昇、中古住宅の流通という3つの常識は、それぞれ独立した話ではありません。

この3つが組み合わさることで、アメリカ不動産では、

「家賃収入を受け取りながら長期間保有し、最後は中古住宅として売却する」

という住宅市場の仕組みが確立されています。

この仕組みから、アメリカでは不動産を「定期預金に近い感覚で保有する」と表現する人もいます。

例えば、子どもと一緒に暮らせる広さのマイホームを現役時代に購入し、住宅ローンを返済しながら長期間住み続けます。やがて子どもが独立した段階で、それまで住んでいた住宅を売却し、夫婦2人で暮らせる小さな住宅へ住み替えます。

この時、最初の購入時から20年ほど経過しているため、売却時には大きな純資産が形成されている可能性が高いです。これを、老後の生活資金として活用するという考え方です。

実際アメリカ政府は、公的年金や退職金だけでなく、住宅の純資産を退職後の生活を支える重要な家計資産の一つとして扱っています。これもまた、日本と異なる不動産の常識と言えます。

アメリカ不動産を「定期預金のようなもの」と表現する背景には、このような市場の厚みがあります。

もちろん、不動産は本当の定期預金ではありません。元本は保証されず、住宅価格が下落することもあります。それでも、長期間保有していれば住宅価格は上昇し、必要なときには中古住宅市場で売却して現金化することができます。

家賃が上がり、住宅価格が長期的に上昇し、築年数が経過した住宅にも買い手が存在する。この3つがそろっているからこそ、アメリカでは安心して住宅を長期的な資産形成に利用することができます。

まとめ

アメリカ不動産の主な特徴として、次の3つが挙げられます。

1.家賃が市場環境に応じて毎年見直される(基本は値上がりする)

2.住宅価格は短期的な下落があっても長期的には上昇してきた。

3.築年数が経過した住宅でも、中古住宅として流通している。

これらは、築年数の経過とともに家賃や建物価格が下がり、最後は売却が難しくなるという、日本人が抱きやすい不動産の常識とは大きく異なる仕組みと言えます。

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